【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第3章 【リヴァイ】 You've Got A Mail
「え?」
「これは、お前のものだ」
「譲っていただけるのですか?!」
エルドの面影を宿す青年には幸せになってもらいたい。
他人ながらそう思う。
「ありがとうございます、ありがとうございます」
よっぽど嬉しかったのか、青年の声は震えていた。
そして、バラの花束の代金を支払うと、大丈夫そうに抱えながら店を出て行く。
「・・・本当に良かったのですか?」
「ああ」
店員が申し訳なさそうにリヴァイを見たが、かえってその方が良かった。
サクラはあの花束を喜んだかもしれない。
でも、きっとあの青年から、プロポーズの言葉とともにあの花束をもらう女性の方が、もっと喜んだだろう。
「何も買わないわけにはいかねぇから・・・」
店内をぐるりと見渡す。
すると、床の上にひっそりと置いてある鉢植えに目が止まった。
「あれをくれ」
「え? あちらでよろしいのですか? でもあれは・・・」
「かまわない」
それは、バラや百合などと違って、プレゼントをするような豪華な花ではない。
しかし、リヴァイにとっては大切な思い出が詰まった花だった。
「では、これもおつけしますね」
リボンをつけても華やかにならない鉢植えに、店員は風船をつけた。
それはハートの形をした、淡いピンク色の風船。
「バレンタインは、愛情を確かめる日ですからね! これでよしと」
大の大人がハートの風船を持って歩くのもどうかと思うが、鉢植えに小さく咲いている花との相性は悪くないと思った。
「ありがとう」
今度こそ代金を支払い、店を出る。
サクラはいったいどんな顔をするだろうか。
ピンク色の風船を持って現れたリヴァイに驚く顔を見せるかもしれない。