【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第3章 【リヴァイ】 You've Got A Mail
「いいですね、恋人への贈り物ですか?」
「ああ、そうだ」
「欧米ではバレンタインには男性からプレゼントするって本当なんですね」
「・・・・・・・・・・・・」
そうなのかもしれないが、自分でも花束を誰かに贈ろうとしているなんて信じられない。
でも、この店員が毎朝見せる笑顔を見ているうちに、この店で買う花をサクラに贈りたいと思った。
「出来ました! こんな感じでいかがですか?」
差し出されたのは、10本の赤いバラとグリーンやカーネーションなどで色鮮やかにアレンジしたブーケ。
その美しさは、昔サクラが育てていた花壇を思い起こさせる。
「とても綺麗だ・・・ありがとう」
サクラの喜ぶ顔が眼に浮かぶ。
リヴァイが懐から財布を出し、代金を払おうとした時だった。
「あのっ、バラはありますか?!」
突然、息を切らせた青年が店に飛び込んでくる。
ちょうどレジの横にあったバラの花束を見て目を輝かせた。
「良かった・・・! どこに行っても売り切れで・・・」
「すみません、お客さん。実は、こちらのお客さんにお売りするこの10本で最後なんですよ」
店員が申し訳なさそうに言うと、青年は絶望したような顔で項垂れた。
「ここもか・・・バラが好きな彼女に今日こそプロポーズしようと思っていたのに・・・」
「プロポーズ・・・」
その言葉だけは聞き取ることができたリヴァイが、その青年に目を向けた。
少し長めの髪を後ろで結っているところや、精悍だけど甘い顔立ちが、どことなくエルドに似ている。
そういえば、アイツも婚約者を残して死んでいったな・・・
そう思った瞬間、リヴァイは花束をその青年に差し出していた。