第2章 1時
「お人形さんみたい!ギュッてしたぁい!」
ナミの手に力がこもる。
……ホントに痛い…
「ほら、ナミ。もう少しで終わるからちょっと離れてろ」
ウソップの言葉に渋々話してくれた。と、思ったのに、
「やだ!血がてでる!!
ごめんね、興奮して力入れすぎちゃったみたい」
そう言うなり、船の中へと消えていった。
『……………』
…だから、痛いっていったのに。
「大丈夫かぁ?しん」
ウソップの心配そうな声と、
バカだなぁ。と笑うルフィ。
なんだか、変な感じがした。
今まで感じたことのない、なにか心の奥からくすぶるような感じ。
「よぉし!できたぞぉ」
ウソップの高々とした声がして、
「うん、このほうがよく似合ってるぞ」
満足したようなルフィの声が続いた。
『眼鏡、返して』
ぼやけた視界のままだと何がなんだかさっぱりわからない。
返してもらったメガネをかけ、いつもまにか目の前に用意されていた鏡を見る。
『………………』
……前髪がない!!
鏡に映っていたのは、肩より少し上でふんわりとした動きのあるボブヘア。
前髪はちょうど眉毛あたりできられ、頬に貼られたガーゼは赤い血がにじみ、
右肩と左ももには大袈裟に包帯が巻かれていた。
あの時着ていた服とは違い、黒いタンクトップに白のショートパンツに変わっていた。
自由の利く左手で前髪に触れ、伸ばしてみるも、
ついさっきまであった長さに戻るわけもなく、
もう一度鏡を見て、先ほどナミに言われた言葉は嘘だと思い直した。
「だから、安静だって言っただろぉ!!」
救急箱を持ったチョッパーがナミと一緒に外に出てきた。
「あら、しん。
なんでメガネかけちゃったの??」
だってなんにも見えないから。
と言いかけたのに、ナミにギュッと抱きしめられた。
「まぁ、かけててもかけてなくても、この小ささも!
この抱き心地の良さも!
たまんないんだけどねぇ」
『………痛い』