第2章 1時
「メガネだァ?」
ふっと頭から重みが離れ、男のシルエットが遠くなる。
『……………………』
「……おっ……これか?」
今度は右側から声がして、そちらを向くと、
「ほらよ」
急に視界がはっきりと変わった。
『あ、…眼鏡…』
クイッと少し位置を直し、ほっと安堵の息を漏らす。
「これで、俺の顔はっきり見えたか?」
『はい、ありが―――』
男に礼を言おうと身を乗り出した瞬間。
『うわぁ!』
「あぶねっ――」
思い通りに動けない事を忘れ、バランスを崩して
ベッドから落ちかける。
それを素早く支えてもらい、なんとか落ちずに済んだのだが、
『きゃ!』
あまりの顔の近さに驚いて、固まってしまった。