第20章 オニノイヌマニ
言っている意味がわからなくて、視線を戻して首を傾げる。
「…?」
「男にはロマンなのよ。」
甲板へと続く扉を開けながら、マスターさんは厳かに言った。
まるで、誓うように。
「海に出たいもんなんだ。」
そんなものなのか。
私は、女だからわからない。
私の世界の男性は…?
あぁでも、あまりに平和すぎたから。
「ロマン…それって…!!?」
マスターさんにさらに問いただそうとしたその時、急に大きな砲台の音が響く。
「…っ!!こんな時に敵襲だと!?」
海の向こうから見える海賊旗を掲げた船が近づくのを認め、マスターさんは機嫌が悪そうに舌打ちをした。
走り出すマスターさんに、何と無く、非現実的でついていけない。
「敵襲…」
ぼぅっと岬を滑るその船を見ていたら、また砲台が響く。
「ぼさっとするな!!奥へ行くぞ!!」
「は、はいっ…」
第二撃めでやっと現実と認識した私は、足を縺れさせながらもあとを追った。
船内に入れば、外で残ったクルーが応戦している音が響いてくる。
相手は万全の体制だ。
こんな状況を狙うなんて卑怯だと思うが、これは海賊と海賊の戦い。
私の常識など通用しないのだとマスターさんの後を必死でついて行く。
通信室に着くや否や、マスターさんはでんでん虫と言われる、この世界の電話をひったくるようにして取り上げた。
「トウカ!!お前は隠れていろ!!なるべく見つかり辛いところだ!!今回は簡単に船の中にはいられるぞ!!」
受話器部分を口に当てつつ、必死の形相の彼に叫ばれ、コクコクと頷き通信室を出る。
隠れられる場所を探して、先ほど教わったばかりの船内を奥へと進む。