第20章 オニノイヌマニ
足早に進む割に、マスターさんはとても丁寧に船内のことを教えてくれた。
私も最近は自分からお掃除とか手伝えることをしていたので、ある程度のことを知っていると思っていたのだが、聞けばやっぱり知らないことの方が多かった。
「こんなに設備の良いものなのですね…」
ひと段落して感想を言えば、マスターさんは気の良い笑をこぼす。
「そこが自慢の船だからな。潜水の技術は本当にすげぇと俺も思う。」
「ええ、見た目が原子的な分驚きました。」
「そうだろう。」
この船が潜水できるということを、最近まで私は知らなかった。
窓の少ない船だなとは思ったことはあったのだけれど、潜水をしていたと知ったのはつい最近。
案内されながら潜水の原理を少しだけ理解できた気がする。
「医療が特化しているのはやはり船長さんが医者だからですか?」
あと、やはりというか設備が良いという所以はこの船の医療機関。
気になる程度にすごいそれに、私はいちいち感嘆の声をあげていた。
「そうだ。キャプテンはこの世界じゃ有名な外科医だ。それも、死の外科医と呼ばれるな。」
「死…?」
言葉に違和感を覚え反復すれば、彼は苦笑を漏らす。
「まぁ海賊がらそんな矛盾した名前なだけだけどな。」
陽気に言っているが、私にはその言葉がチクリと刺さった。
「難しいです。」
「ん?なにがだ。」
思わずもれた言葉を拾って、聞き返される。
うまく言葉にできない気がして、まっすぐマスターさんを見れなくて、そっぽを向いた。
「だって、船長さんは私を助けてくれた恩人です。でも海賊で、世間に疎まれてて…なにが良いのか。」
難しい。
そう続ければ、マスターさんは頭をガシガシとかきながら
「トウカは女だからなー。」
と、苦々しげに吐く。