第14章 リハビリ
ベポとあいつのやり取りにすっかり毒気を抜かれたのか、
「ほらよ。」
キッチンから出てきたそいつは警戒心のかけらもないのが伺えた。
あいつは差し出されたプレートに、恐縮するように頭を下げると、コックに向き直る。
「あ、ありがとうございます。えと、初めまして、トウカです。」
見た目の年齢から5歳くらいしたに見えるようなへらりとした人畜無害そうな表情を浮かべて言われたせいか、コックはまるで好々爺のように目を細めて笑った。
「おぅ。俺はみんなにマスターって呼ばれてんだ。そう呼んでくれ。」
「はい、よろしくお願いします。」
初めて見るコックの顔に新鮮味を覚える。
「疲れたか?」
「えぇ、久しぶりに歩いた気がしました。」
「ほら食え。」
「はい、いただきます。」
普段では決して見れない顔を横目で見ながら、俺の口から息とともに笑い声が漏れた。
「マスターミルクもらっても良い?」
しかしベポが相変わらずのトーンで言った言葉にかき消され、気づかれない。
「あぁ、調理用は飲むなよ。…トウカだっけか?」
「はい。」
ベポに適当に答えて、そいつは少し緊張したように呼びかける。
その雰囲気を察したのか顔をあげると、二人の視線はしっかりと絡む。
「うまいか?」
そんな事を、真剣に聞くなよと思ったが、本気のその表情を見てしまっては何も言えない。
聞かれたあいつもあいつで。
一瞬驚いたような表情の後に、またあの人畜無害な顔を晒す。
「はいっ!!とっても!!」
「そうか。まだあるから食えよ。」
「ありがとうございます。」
つられて笑っているとは気づかないのか、そのままの表情で振り返られる。
「…こりゃ毒気が抜かれるな。」
まるで諦めたように言われれば、俺は肩を竦めた。
「思った以上すよ。言ってた意味がわかります。」