第6章 カイゾク
病院なのにキャプテン、という言葉に違和感を覚えながらそのままでいると、先ほどの足音とは質の違う足音が徐々に近づいてきた。
何が何だか頭のついていかない私がいる部屋のドアが開いたのは暫くしてからであった。
コツコツとマイペースな足取りのその人は、私の寝ている方へとやって来る。
視線だけ音のする方へと伸ばせば、その人が近づくに連れて、頭から上半身があらわになる。
まず最初に見えたのはモコモコのニット帽子のようなものを被った頭で、そこから見えた表情と言ったら何と形容して良いのかわからない。
あの船の船長よりも整った顔で、くっきりとうつる目の下の隈が気になる男の人だった。
すごい細身なのに、私の横に立った時に身長が高い事に驚く。
どこか不思議な雰囲気を醸し出す彼の視線と、少しだけ恐怖する私の視線が交差する。
「名前は?」
私からなにか言った方がいいと口を開きかけたが、意外と鋭いテンポで彼が口を開いた。
「えっと…?」
言葉の意味を理解していたが、その行為自体の意味がわからずに戸惑うと、彼は少しだけ眉間にシワを寄せた。
「…俺は医者だ。お前の名前は?」
こんな強面のお医者さんがいるものなのだと考えながら
「あ、トウカです」
あわてて答える。
みれば腕から伺えるのは…刺青。
もしかしたらこの世界で医者というのはこういう人なのかもしれない。
そう思う事にした。
「トウカか。俺はトラファルガー・ロー。この船のキャプテンだ。」
あれ、お医者さんでは…?
先ほどとは違う自己紹介に疑問が浮かぶ。
「肩書きなら船長と医者両方だ。」
するとなぜだかそう帰って来る。
そんなに顔に出ていたのだろうか。