第31章 ハツジョウリク
「アレだ。」
「船長さん、あの店って…?」
ずいぶんと高級感溢れている様に見えるのは気のせいではないはずだ。
この通りの他の店と異彩をはなっているのは、この世界初心者の私でもわかる。
「生活品ほとんど取り扱ってるところだ。知り合いがやってるからそんな畏るな。」
私の恐れを見透かした様にたんたんと告げると、船長さんはその店のドアを開けた。
途端に綺麗な鈴の音が響いた後、奥からパタリパタリと軽い足音が響く。
船長さんに続いて店に入った私たちを迎えたのは、きっちりと並べられた生活品たち。
どれも上質なことは見た目から伺え、奥に進んでもそれが乱れる様子がなかった。
一番奥にあるカウンターまで行くと、船長さんはその歩みを止める。
カウンター横にある猫足の椅子が目に入り、その高級感に戸惑う私の正面のカウンター奥からひょっこりと人が現れた。
「あら、久しぶりね。」
その人は口に鮮やかな紅を引いた人だった。
詰襟の婦人服を優雅に着こなし、きっちりと化粧を施したその姿は、まさに大人の女の人だった。
綺麗な店員さんだな、と思う。
「しばらくだったな。」
いつもよりも慣れ親しんだ様にそう発した船長さんは、自然な動作で横にある猫足の椅子に腰掛けた。
商品かと思ったが、どうやら来客が自由に使えるものだったらしい。
それくらい大切に磨き込まれていた。