第30章 カセ
しかし、この前のこともあり、船長さんならきっと降ろそうとは思わないのではないかと私一人で自己完結していたというのに…。
「あの…船長さん、私、おりません…」
「お前の意見なんざ聞いてない。船長命令だ。」
「でも…この前みたいなことがあったら…」
「それでも、上陸してもらう。」
「通貨の使い方をわかっても…お金を持っていません…」
「ここで働いてる分くらいは出してやる。」
「船長さん…!!」
少し大きな声を出して立ち止まれば、冷静に一定のペースで歩いていた彼の足音が止まり、不規則な足音でこちらを向いたと悟る。
悟しかできない。
だって今目の前が涙で滲んで船長さんの輪郭しかわからない…。
「こんなにも良くしてくださる…優しい皆さんを、傷付けたくありません…」
何とか訴えて、止まらない涙を拭おうと腕を上げた。
しかし、その手は力強い腕に掴まれる。
「それは、俺たちが、そんなに弱いと思ってるってことだな?」