第29章 チョーカー
なんだかとてもご機嫌だ。
船長さんもこうであれば愛嬌もあるものを。
「どうかしました?」
顔だけそちらに向けて問えば、勢いよく突き出される拳。
驚いて一歩身を引くが、その拳はまるで神秘を扱うようにゆっくりと開かれた。
「綺麗…」
考えるよりも先にそんな言葉が漏れる。
その手に握られていたのは、綺麗な細工の施されたチャームだった。
宝石かただの石か素人の私にはわからないが、青い透き通った石が散りばめられたシルバーチャーム。
私の反応に機嫌をもっと良くしたのか、シャチさんはにっこり笑って私の手を取り、その手にそれを握らせた。
「え!?シャチさん!?」
驚いてシャチさんを見上げるが、彼は全く気にした様子もなく握らせた私の手の上に自分の手をかぶせて握りこませる。
こんな扱いしたら壊れるのではないかとヒヤヒヤしたが、シャチさんの顔は余裕そのものだった。
「これ、やるよ。この前の船から取ったんだけどな、換金しに行ったら石に価値がないとかで、全然金目のものじゃなかったんだよ。子供のおもちゃみたいな値段でさ。」
シャチさんはいつも明るいが、その話をする時はいつも以上に明るかった。
普通、持ち帰った宝にお金の価値がなかったらこんなに喜ぶことではないのに。
「私が持っていても、きっと壊してしまいます。綺麗なのに、もったいない…」
こんなに素敵なチャームをもらう理由が自分には見つけられず、私はそっとその手を離そうとしたが、シャチさんは曲がらなかった。
「これはみんながトウカにあげようって満場一致だったんだぜ。もらってやってくれ!」
人の良い笑顔がとても眩しかった。