第26章 トリカゴノナカ
それでも沈黙を守ろうとする彼に、私は目が奪われて居る。
しばらくの沈黙ののち、船長さんは徐に鉄格子間からするりと身を滑らせて侵入してくる。
あまりの行動に落ち着けなくなった私は、思わず二、三歩後ずさった。
「船長さん…ですよね?黒鉄が、真似してるとかじゃないでしょ?」
そんな中でも私に迫ってくる船長さんに、声をかけながらさらに後ずさる。
足枷がジャラジャラと音を立てるいつもは億劫なそれが気にならないほど、私は緊張した。
しかし、そんな私の姿に何を考えて居るのかわからない船長さんは、自分の足元にある私の足枷の楔に気づくとその端っこを持って容赦無く引っ張った。
くんっと、急な力に対抗できず、私は難なく倒れてしまう。
小さな悲鳴をあげるのもつかの間、彼は容赦なくその端っこからぐいと枷につながる鎖を引っ張った。
「ま、待ってください!!」
この人に、恐怖を感じたのはこれが始めてかもしれない。
仏頂面で、ただ無心で鎖を手繰り寄せるその姿がとてつもなく恐怖だった。
必死に腕だけで抵抗しようにも、私はあっという間に船長さんの足元に見下される形となってしまった。
緊張で震える。
と、なんのモーションもなく引きずられて床に倒れこんだままの私の顔のすぐ横に、船長さんの細いのに筋肉質な手をつかれた。
思わず息を飲むと、船長さんは相変わらずの不機嫌で、私の顔を覗き込む。
「いつまで悲劇のヒロインぶってる。」
久しぶりに聞いた第一声はこれかと思うほど、辛辣だった。
思わず反論しそうになっていた私に、さらに船長さんは顔の距離を詰める。
「俺は怒ってる。」
心をえぐられたように、呼吸が止まる。