第26章 トリカゴノナカ
「おい。」
不意にそう、ここ最近聞き慣れた声に話しかけられた気がして、膝に埋めていた顔を上げた。
居る訳もない、その姿を探して目の前の鉄格子の先を睨む。
しかし依然そこには夏の緑が生い茂るばかり…。
またいつものように黒鉄が来て「早く戻れ」というのかとおもった。
あまりにもみんなが恋しくて、空耳したのだと、そう思いまた顔を俯かせようとした時だった。
この空間では珍しく、少し寒気のする風がさっと通り抜ける。
「おい、聞こえねぇのか。」
やっぱりあの人の声が響いて来た。
今度ははっきりと、私の後ろから。
まさかと思い振り返ると、鉄格子の向こう側、ツユクサを踏み分けながら不機嫌そうに歩いてくるその人。
まさかの本人の姿を確認し、私は咄嗟に立ち上がった。
ジャラリと足に付いた枷がなる。
こちらの動揺も知らないというように鉄格子のすぐそばまで来て、その人は腕を組んでこちらを見据える…。
「…船長、さん?」
何故ここにいるとか、どうやってここにきたとか、いろいろ気になって仕方が無いが、どう考えても私に用がある船長さんの方が全く話を切り出さないのに苦しくなって彼を呼ぶ。