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審神者と刀剣と桜

第7章 初太刀・初脇差


 鼻の下を擦りながら、謝罪をする。結局、話そうとしてくれた所は、話してくれなかった。新撰組の刀なんてーーって言ってたよね?

「で?アンタは誰が好きなんだよ新撰組隊士の中で。」

 歳さんか?とても興奮した様に身を乗り出して話しかけて来る。必然と距離が近くなる。

「和泉守さん、近いです。主君から離れて下さらないと、別の意味で主君が御倒れになられます。」

 体中の熱が顔に集まってくるのが分かる。誰だって、こんなイケメンに近づかれたら、顔を赤くするしょ?
 今まで黙って話を聞いていた前田君が、助けを出してくれた。和泉守さんは初めて自分がウチの目と鼻の先にいる事に気が付いてくれた。

「悪い。で、誰なんだ?」

 改めて距離をとり、もう一度聞かれる。何だろう、いつもはすんなり口から出て来るのに、恥ずかしくて言えない。
 早く!如何やら、主の影響で短気らしい。返答が遅い事にイライラし始めている様子だった。

「あ、えっと…沖田ーー沖田総司…さん。」

 恥ずかしさのあまり、声が小さくなる。何処かで、「歳さんじゃねーのかよ…。」と言う声が聞こえるが、聞かなかった事にします。
 それより、彼は土方さんの事を”歳さん”って言ってるんだ…。何か良い事を知った気がする。

「どうして沖田なんだ?」
「え、…何となく…?」

 乙女ゲームの影響ですって言える訳がない。でも、それだけの理由じゃないし。彼の最後とか、史実で惚れたって言うのも理由だけど。
 言えない、恥ずかしくて言えない。

「何となくねえ~。」
「土方さんも好きですよ!尊敬してますし。」

 何だろう、気温が下がった様な気がする。慌てて、土方さんのについても言ったけど…時すでに遅し。

「清光達が戻って来るまで、歳さんのカッコいい話をしてやるよ!」

 回復する所か、悪化しそうな予感がする…。

★★★

 慶応四年ーー1868年一月三日(陽暦では一月二十七日)、戊辰戦争の緒戦ーー”鳥羽”。ここでの戦いは正式には”鳥羽伏見の戦い”と言われている。

(”鳥羽伏見”…。”君”が来れなかった戦場。)

 離れ離れになっても良いように、加州以下六振りはインカムを着用している。
 ここへ来て時間が結構経っていた。加州はそれ程傷ついてはいないが、他の者は所々掠り傷を負っていた。それにーー、

「悪い。助けて貰っちまって。」
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