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審神者と刀剣と桜

第7章 初太刀・初脇差


 顔を和泉守さんの方に向けた。女性に間違えそうな程綺麗な顔に、青い目、キューティクルのある艶やかな長い黒髪。
 何だろう…喋り方といい、声がある人物に似ている気がした。って言っても、乙女ゲームのキャラだけど。

「ああ…確かに俺の主は新撰組の奴だった。しかも名の知れた男だった。」

 頭を掻きながら、ウチの質問に答えてくれる。やっぱり…そうだったんだ。じゃないと、新撰組の羽織なんて着ていないだろうし。

「その”主”さんは誰なんですか…?」

 藤堂平助?それとも斎藤一?ウチが知っている新撰組隊士の名前を頭の中で挙げてみても、何処かしっくりこない。沖田総司では無いのは確か。だって、既にその刀とは別の本丸のだけど、ご対面済みだし。
 次の瞬間、挙げられる隊士の名前に、納得せざるを負えなかった。

「鬼の副長、”土方歳三”。新撰組を知ってるんなら、一度は聞いた事のある名だろ?」

 ウチは、とんでもないモノを引き当てたらしい。

「え…。土方、歳三さん…。」
「ああ、俺は土方歳三が使ってたってことで有名な、和泉守兼定だ。……つっても、俺は評価の高い二代目兼定じゃなく、十一代目か十二代目が打った刀だけどな。まっ、侍の時代の終わりの、その最先端だったんだ。生まれに文句はないね。」

 後半は何を言っているのかさっぱりだけど、兎に角、あの”土方歳三”が使っていた刀を前にするなんて…。
 目標にしていた沖田さんの刀より、先に来てしまった。喜んでいいんやら、悲しいんやら…。
 嬉しいのは確かだから、興奮してまた起き上がったけど、リターンした。

「アンタ、忙しないな…。」
「済みません…。嬉しいんです。本丸に来て欲しいって思っていた新撰組の刀が来てくれた事に。新撰組が好きなんです、私。でも、まだ一振りも来ていないので。」

 一人称を変えて、話した。年上だから、礼儀はわきまえないと。そんな事を言ったら、加州にだってしないとだけど。

「そいつは嬉しい事言ってくれるんじゃねーか。って言うか、新撰組の刀なんーー、」
「へ、くっしゅん~!!あ~あ…。」

 何かを言おうとしていた和泉守さんに色気の無いおっさんみたいなくしゃみを被せてしまった。
 誰か噂でもしてるのかな…。それよりーー、

「済みません。何か言おうとしてましたよね…?」
「色気のねえーくしゃみだな。…別に何にもねーよ。」
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