第7章 初太刀・初脇差
「お布団…敷けました!」
「有難う、二振り共。」
向かった先は千隼の部屋だった。扉は開いていて、室内では使っている布団が敷かれていて、その上には子虎が寝っ転がっていた。
「虎さん達、主様が寝るんだから退かないと…。」
困った様に子虎達を退かそうとしてる五虎退。だが、彼には手に余る程で、前田と和泉守兼定も手伝って、彼女を布団に寝かした。
降ろした衝撃か、千隼の目がうっすらと開けられるのがこの場にいる全員、目撃した。
★★★
何か…ゆらゆら揺れている様な…。しかも、何かの上に居るのウチ?…感触的にーー布団?
うっすらと目を開けると、傾き始めた日が目に入って来て、痛い。
「主君?」
「主様?」
ぼやけている視界の先には白い髪の子と茶髪の子が居るのが分かった。声からにして、五虎退と前田君だな…。
「案外、目が覚めるの早かったね。」
左向きに体が横になっているらしく、背中側から聞き覚えのある声が聞こえた。
「加州…?」
「アンタをここまで運ぶの本当に骨が折れるかと思ったよ。どんだけ重いの?」
この悪態は加州ですね。正解だよ、確実にだよ!?
起き上ろうとしたけど、頭の痛さに体全体の怠さが混ざって、もう一度布団に吸い込まれるかの様に横になった。枕がぼっふと埃を立てる。
「あ~あ…無理。頭痛いし、怠い…。」
「だろうね。顔が死んでる。」
それ程酷いのか…。無理なんてしないで、そのまま時間が経つのを待てば良かった…。
仰向けに寝て、加州がいる方に顔を向ければ、見慣れない顔が加州の隣にいた。いや、起こす時に見た顔に似ている。
「加州の隣にいる人は、ウチが起こした刀?」
「そう。”和泉守兼定”。」
”和泉守兼定”と呼ばれた刀剣は着ている赤い着物の袖に腕を互いに入れ、腕を組んでいた。
「ああ…えっと…岩動千隼です。主でないけど、主になるんだと思います。宜しくお願いします。」
辛いけど、起き上って自己紹介をする。それに驚いたのか端正な顔立ちの”和泉守兼定”はまじまじと見てくる。
「お、おお…。俺は和泉守兼定。かっこ良くて強い! 最近流行りの刀だぜ!アンタ、大丈夫か?大丈夫じゃねーんなら寝てろよ…。」
迫力美人みたいで怖い印象があったけど、荒い口調だがウチの体を案じてくれた優しい刀だった。