第7章 初太刀・初脇差
鍛刀部屋から千隼を抱えながら出て行く加州。その後ろを和泉守兼定が付いて行く。
部屋から出れば、廊下に行きつく。二振りは廊下に並んで進んでいた。
「あ~あ、重っ。チビの癖に重いって…何食べてたらこうなるんだか…。」
「お前が抱き抱えている女が、主ね…。小さいな。」
「これでも俺達の時代で言う裳着の年齢は過ぎてるよ。今の時代のそれにはまだ達してないぽいけど。」
「げ、マジかよ…。」
ぽつぽつ互いに会話を織りなしていく。その中で取り敢えずは自分がどうして人間になるのか、成らざるを得ない理由は知っていた。
要するに、歴史を守る為刀剣の力が必要だと。
「さっき、『人間になった途端、刀に戻された。』って言ってたけど、何があったの?」
加州はそれが気になっていた。和泉守兼定と同じ鍛刀から来た、既にいる仲間はそんな事は一言も言ってはいなかったから。
何気なく聞いただけなのに、和泉守兼定は進むのを止めてしまった。それを横目で見ていた加州も足を止める。
「ああ…、一度、俺は別の所で目を覚ましたんだよ、今の姿で。歴史を守って欲しい云々言われてな、その後に元の刀の姿に戻されたんだよ。」
「要するに、一度作られてるの?お前…。」
「さあ…。お前が”作った”って言うんなら、そうなんじゃないか?って言っても、俺は知らねーし。」
「…そう。」
一層、疑問が深くなる。ここでうだうだ考えたって、答えは出て来る訳じゃない。
二振りはこれ以上何も言わず、ある部屋を目指していた。
★★★
「加州?たんとうはおわったんですか?あるじさま、どうしたんですか?」
「うん、終わった。コイツは…いつものだよ。」
加州が目指している部屋には、どうしても居間の前を通らないといけない。彼らが鍛刀している間、暇をしている短刀達と遭遇した。
短刀達は加州達の姿を見ると近づいて来た。加州の腕の中にいる千隼の姿と見知らぬ者の姿に疑問を抱きながら。
いつもの。そう言えば、そこに居る和泉守兼定以外が納得した。本当にいつもの事で、日常的な物だから、心配はするがそこまでだった。
「ですが、ぐったりしてますね…。」
「気絶しちゃったの?そこまでになる程、力を使ったの?」
「いや、一回だけだよ。でも、急に分量を多くしたからね。」
「…彼が今日の鍛刀で来た刀剣?」