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審神者と刀剣と桜

第7章 初太刀・初脇差


★★★

 正座を崩したような座り方をしていた千隼は、糸が切れた人形の様に体が倒れていく。
 彼女のその状態に体が反射的に動き、体を支えた。ぐったりと加州の腕の中に千隼は納まっていた。

「だから言ったんじゃんか…ホントに馬鹿と言うか、阿保と言うか…。」

 悪態が自然と口から出るが、表情は受け止めれた事に安堵している様だった。咄嗟の事に心臓が慌てているのか、落ち着かせる為に一つ息を吐いた。
 それと同時に彼の目の前では光を放ちながら、桜が舞っていた。室内であるのに何故、桜の花弁が舞っているのか。そこには窓はあるが、外には桜の木は無い。と言う事はーー、

「はあ~あ…良く寝た!たくッ、人間の姿にされた瞬間、また刀の姿にしやがって…って言うか、ここ何処だよ!?」

 千隼の前に置かれていた新たな刀剣の場所には一人の人間がしゃがみ込んでいた。
 その人間は独り言を言いながら、寝起きでする伸びをしていた。且つ、自分が何処に居るのか、鍛刀部屋を見渡していた。
 加州は桜の中から目の前に現れた刃物に、目を見開ていた。

「…和泉守…兼定…。」
「ああ、誰だよーー、」

 丁度、人物は加州達から背を向けていた。
 太腿に届く程ある長い黒髪、左の一房だけ三つ編みにされている。赤い着物を着ているのか振袖で分かる。そして、今、加州の目にはよく目にしていた”浅葱色のだんだら羽織”しか映っていなかった。

「え…お前…清光か!?」

 後ろを振り向き、声の主を探した”和泉守兼定”は加州の姿を認めると、目を見張った。
 顔は酷く整っていて、髪の長さから女性に間違いそうだが、口調や声の低さから、男であると窺える。
 和泉守兼定は見知った顔である加州に近寄ろうとしたが、加州が抱いている千隼を認めると、足を止めた。

「まさか、お前だったなんて…。出て来た本体が見た事あるな~なんて思ったら、案の定じゃん。」
「久しぶりだな。って言うか、お前の腕の中にいる奴誰だよ?しかも、ここは何処だよ!?お前も人間になってるし…。」

 赤い目は和泉守兼定の青い目を見ていた。それから目を腕の中の千隼を移し、横抱きにして、立ち上がった。

「ここは鍛刀部屋。お前を作って、コイツが起こした。俺も起こされたし。で、コイツが俺の今の”主”でアンタの”主”にもなる人間。」
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