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審神者と刀剣と桜

第7章 初太刀・初脇差


★★★

「っと言う事で、量を多くして鍛刀したいと思います。」
「うん、如何言う事?」

 ブリザードが出てきそうな感じの目で、ウチを見下ろしてくる加州さん。物理的攻撃が出来たのなら、今頃、凍っているだろう。

「いや、短刀ちゃん以外を出したいなら、各分量多くしなくちゃいけないって言われたから。」
「やっと気づいたのかよ!?しかも、人に聞いたのかよ…。」

 数日前に自分で言ってたくせに…。そう言って、着物をたすき掛けしながら呆れたように言う。

「で、どん位必要なの?」
「えーっと、ーー、」


 各量を350にして、鍛刀の式神にお願いする。メラメラと燃える火の中へ、玉鋼が入れられる。瞬時に鍛刀部屋のタイマーが時間を示す。

「”三時間”…。」

 映し出された数字を読めば、頭を鈍器で殴られた感じの痛みが走る。
 今まで二十分しか出ていなかったからなのか、力の使い過ぎか、その場でしゃがんでしまった。

「あ~あ…またかよ…。」

 悪態を吐きながら、加州が近寄って来る。これは今まで以上にヤバいかもしんない…。
 でも、この数字から出て来る刀剣が気になる。だからーー、

「手伝い札、使って下さい。」
「はあ!?」

 凄い形相でウチを見てくる。顔には馬鹿じゃないのって書かれている。

「馬鹿じゃないの?いいや、馬鹿通り越して、死に急ぎ野郎だな。」
「…うう、気になるんだよ…今まで見た事が無い時間だから…。」

 痛みが痛みだから、小声になる。それでも聞き取ってくれた加州は溜息を吐いた。

「アンタが倒れたって、運んでやんないから。せいぜいここで倒れてれば?」

 その言葉と同時に、手伝い札を使われた事によって作られた刀剣がしゃがんでいるウチの前に、差し出された。
 それは加州の物よりも大きい、刀身の刀だった。加州とはまた違った赤色の鞘。

「え…。」

 ウチの目の前にある新たな刀を見て、これでもかと目を見開く加州。それに、「嘘だろ…。」と呟いてもいた。
 新たな刀に茫然としている加州を余所に、扇子を手にして顕現させる態勢に入った。
 目を瞑れば、体を丸くして寝ている人影を掴んだ。
 長い黒髪に、赤い着物、極めつけはーー、

「新撰組の羽織…。」

 あの、浅葱色のだんだら羽織を着ていた。まさか…新撰組の?
 一言呟くと、姿を現すそれ。同時にウチは意識を失った。
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