第7章 初太刀・初脇差
★★★
無事、小夜のお蔭で体育館へ着いた。時間はギリギリだったけど。
『さっきの男には気を付けた方が良いよ。』
『え…何で?』
『…勘…?そんな感じがする。』
そんな事よりも、さっきまでの会話が気になってしょうがない。何を根拠に橘高さんに気を付けなきゃいけないの?
ただ少し、馴れ馴れしいな~みたいな感じなだけなのに…。
隣のパイプ椅子に座る小夜に目を向ける。大人しく、動かずに座っているが、床に足が付かず宙に浮いている。可愛い…!
「何?」
「え、いや、何も無いよ。うん、無い。」
ガン見していたのがバレたのか、小夜の大きな三白眼がウチを捉える。もう、狼狽えるしかない。
「…朝、話した事、僕は貴方が考えた人達を殺せばいいんだね。」
朝話した事…?…ああ、あれか…。
「何で、そんな結論に至っちゃうかな…。殺さなくていいよ。ってそうじゃなくて、そう言う事もう言わないで!小夜自体がどんな刃生を送って、今に至るのかは知らないけど少なくともウチはそんな事望んでない。」
自分の頭に手をやり、少し触る。上手く言葉に出来てなくて、支離滅裂だと思った。
「復讐だけが、僕がいる証になるんだ。」
何とも意味深な事を言う小夜。宙に浮いてる足を少し揺らして、目はそれを見ていた。その台詞がこの少年の刃生を物語っていると思った。
万事屋に行った時だって、僕を売る云々いてたし…この子はどんな刃生を送ってたの…?本当に。
「それって悲しくない?自分で心底思っての言葉なのそれ?説教とか言いくるめとかそんなんじゃないけどさ、君はどう思ってるの?君の本心って何処?」
こんな言葉を簡単に、息を吸うが如く、言えるこの見た目少年が哀れで、可哀想だと思えた。同情した。
ウチがそう言えば、三白眼が上に来てその瞳に自分の顔が映る。どことなく小夜の顔は悲しそうなモノになってる気がする。
「…もし、本心が見つからないなら、ゆっくりでいいから探しな。それでも復讐が君の本心なら、もう何も言わない。」
癖っ毛の小夜の青髪を優しく撫でる。突然触られたから、肩がビクッて飛び上がってた。でも、大人しく撫でられていた。
小声で会話をしてたけど、いつの間にか、長ったらしい話は終わって、クラスが発表されていた。
「嘘…。」
貼り出されたクラスの紙に、ウチの名と天音の名前があった。
