第7章 初太刀・初脇差
「貴方は誰?その手は何?」
小夜が刀を向けながら、目の前の橘高さんに問う。彼の左手がウチに向けられている。どうやらウチに触れようとして、伸ばしていたみたいだ。
「千隼ちゃんの刀か…。あれ?”初期刀”じゃないの?」
「”初期刀”?」
眩暈も治まって、立ちながら聞きなれない言葉を聞き返してみた。小夜は依然として刀を仕舞おうとはしていない。
「”初期刀”って言うのは、”ここ”に来る前に自分の意思で選んだ刀の事だよ。最初で最後のね。」
後から来る刀は自分の意思では選べないからね。そう言って、困った様に両手を前に出して振る。
「君の主には何もしないから、刀を鞘に収めてくれないかな?」
「……。」
そう言われて、小夜は無言でウチを見てくる。…確かに何かしてくる事は無いか…。
「小夜。」
目を見て、名前だけ口にする。鞘に収めてと願いを込めて。
すると、意思が通じたのか、小夜は刀を収めてくれた。でも、依然としてウチと橘高さんの間にいた。
「ウチの初期刀は留守番だよ。…ウチにはまだ小さい子達しかいないから。」
「そうなんだ。見てみたいな~君の初期刀!」
出来る限り不快感を与えない様に、素っ気無く言葉を返せす。そんなんでも、笑顔で返してくる。
そんなに見てみたい物なのかな…?他人の刀なんて。
不思議に思っていれば、ブレザーの裾を引っ張られる感覚がした。案の定、小夜が引っ張っていた。
「もう行かないと、時間になるんじゃない?」
彼に会った事で時間の事を忘れていた。急がなければ!
「ヤバッ!あ…橘高さんも一緒に行きますか?」
何となく彼を誘ってみた。だが、彼は後で行くから大丈夫!と言ってまた後で、と手を振っていた。
ウチと小夜は橘高さんを残して、体育館らしきさっきの場所に戻る事にした。
★★★
小夜と並んでさっきの場所を目指す。
「…ごめんね?ご迷惑をお掛けしました。」
ウチよりも凄く低い青髪の少年に向かって言った。でも、小夜はこっちは向かずに、「別に。」とエ〇カ様みたいに言った。
これ以上何も言えなくて無言になった。今度は小夜が口を開いて話しかけてきた。
「さっきの男には気を付けた方が良いよ。」
「え…何で?」
「…勘…?そんな感じがする。」
それだけ言って、足を進める。疑問だけを残して。