第7章 初太刀・初脇差
「小夜ー!!何処?って言うか、ここは学校の何処?」
人一人もいない中、小夜の名を呼ぶ。体育館付近を探索しようと思っていたのに、いつの間にか見知らぬ所に居た。
うん、完璧に迷子やっちゃってます。
元来た道を思い出しながら、戻ろうと足を進めていたが、駄目みたいだ。
「本当にどうしよ…時間も…ヤバいしな。」
ポケットの中に入れていたスマホを見れば、もう直ぐで五分前になる。流石にギリギリには行きたくないな…。
途方に暮れてオロオロしていれば、誰かに話しかけられた。声的に、男の声だ。
「あの…どうしたんですか?」
振り向いて見てみれば、ふわふわの栗色の髪に垂れ目の美少年がウチの後ろに居た。それに気づかなかったから、物凄く驚いた。相手には失礼だけど。
「あ…驚かしちゃった?ごめんね。驚かすつもり無かったんだけど…。君も学校に通う子?」
「…こちらこそ済みません…。ああ…はい…。」
見知らぬ人(当たり前だ)+男子だから、人見知りと苦手意識が出て、声が小さくなる。且つ視線が泳ぐ。
そんなウチなど気にしてないのか、笑顔で「そっか。同じだね。」と言って、ウチに近づいて来る。
「ボクの名前は”橘高康晴(きっかた やすはる)”って言うんだ。君の名前は?」
柔和な笑顔で自己紹介され、名前を聞かれる。一瞬吃驚して、反応が遅れた。
凄く人懐っこい人だなこの人…。良い人に見えるけど…。名前位なら別に。
「岩動千隼…です。」
「千隼ちゃんか…宜しく。ボクはどう呼んでも構わないよ。」
躊躇せず、ウチに握手を求めて来る。差し出された手を握っても良いのか、恐る恐る手を差し出せば、握って来る。
ああ…ウチ、この人苦手だ…。唯でさえ男が苦手なのに、初対面なのにこれって…。
薄く眉間に皺を寄せていれば、突然眩暈が起こった。フラッと視界が霞み、その場にしゃがみ込んだ。
「千隼ちゃん!どうしたの!?」
眩んだ視界と共に、ある光景が目に浮かんだ。
目の前の男子と同じ髪色と髪型の青年が、歪んだ笑顔を見せて、刃を向けて来る光景。誰に向けているのかは分からない。
「大丈夫?」
「…主!」
ウチが探していた刃物の声が聞こえ、眩暈の治まった頭を上げれば、腰の短刀に手を掛けてた小夜がウチに背を向け立っていた。