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審神者と刀剣と桜

第6章 ”オカミさん”


 にこっと笑い、こちらに近づいて来る。

「主君!」

 さっきまで店を見ていた前田君達がウチの前に来る。

「あら、大丈夫よ。この子に何もしないわ、安心しなさいな。」

 腰の短刀に手を掛けていた前田君の手を、制す。優しい手付きで触る。

「また、会えるなんてね。」
「え…。」

 意味深な事を呟く美人。ウチは思わず聞き返す。

「なんでもないわ。」

 まあ、笑って誤魔化されたけど。それよりも、そう言って話を続ける。

「私の事は”オカミ”とでも呼んで。」
「オカミ…さん…。」
「そう!」

 嬉しそうに笑うオカミさん。いつの間にか今度は加州が隣に居た。

「アンタが、万事屋の?」
「そうよ。宜しくね、彼女の近侍さんである加州清光。」

 見渡せば、何でしょ…ウチの場違い感…。こんなクトゥルフでのAPP18みたいな人達がいてさ、もう、怖い。

「何でコイツの近侍になる訳!?違うし。」

 指でウチを指してくる加州。行儀が悪いだろ。
 手を叩けば、オカミさんはさも驚いた顔をウチ等に見せた。

「あら、”加州清光”ならそう言うと喜ぶのよ?他の本丸の彼等は。それに、審神者にべっーたり。」

 今度はこっちが驚く番だった。オカミさんの言葉に耳を疑った。
 喜ぶ?加州が?可笑しいでしょ…。ウチに対して毒舌で、しょっちゅう手刀を飛ばしてくるのに?

「嘘でしょ…。」
「うわ…何それ…。」

 台詞が重なりながら、お互いそれぞれ呟いた。それから互いに見合わせると、加州の手刀が来た。
 ふざけんなよ…。こちらもお返しで足を踏んでやった。

「おま、ふざけんなよ!この、チビ!!」
「先にやったのお前じゃんかよ!カシューナッツ!!」

 お前みたいにヒールの靴じゃないだけ、マシだと思え!
 互いに睨み合ってると、笑い声が聞こえた。それはオカミさんが出しているものだった。

「全ての刀が全て同じ性格か、と言う訳でもないから。私は面白いと思うし、それが各本丸の個性になる訳だし。」

 オカミさんはウチ等に背を向けながら、流れるように言う。その言い方だとーー

「他の本丸にも性格が違った刀っているんですか?」

 ウチの問いに対して、振り向きながら答える。

「それは、これから関わっていくから、自分の目で見る事が出来るわ。」

 微笑み、何処かへ行こうとオカミさんは歩み始めている。
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