第6章 ”オカミさん”
皆、思い思いに店を見て回る。ウチも見てみたいと思っているけど、先にお店の人を見つけなくちゃいけないよね。
でも、見渡せど見渡せどウチ等以外人っ子一人いない。
「如何したの?」
乱がウチの隣に来て話しかけてきた。本当に女の子にしか見えない。この子も男なんて…女として負けたわ、完敗だわ。
「いや…店主さんがいないな~って…。乱は何か欲しい物でもあった?」
「あったよ。」
「一個だけなら買ってもいいよ。」
そう言うと、隣で嬉しそうに笑う。人の形で初めてお店に来たんだからね、一個ぐらい。
嬉しそうに隣から離れていく乱を見ていながら、奥に障子の扉がある事に気付く。奥に部屋があるんだ…。
入り口に近い所に居たから、奥に行ってみようと進んでく。障子の部屋の前には段差と言うか階段がある。そこに五足靴が置かれていた。
下駄だったり、普通のウチが履いているような靴だったり、全て綺麗に揃われていた。
「ここに店主さんいるのかな…?」
首を傾げながら、ぼーっとその扉を見ていた。すると突然障子が開いた。
「やっぱり、来ていたのね。」
不意を突かれて開かれたので、驚いてしまった。しっかりと声にも出ていた。
開いた扉から綺麗な着物を着た、これまた着物に負けず劣らずの美人な人が出て来た。
妖艶な雰囲気を身に纏い、唇の紅が目に焼き付く。
「ごめんね、来客が来たみたい。二階に居てくれる?」
美人な人に見惚れていて気付かなかったけど、やっぱり人が四人もいた。
遠くからだからはっきりとは分からないけど、全身白い人や、スーツを着ている人、襟足が長い人、布のお面を現在進行形で付けている人が居た。
「大丈夫だよ。じゃあ僕達は二階に居るよ。」
その人達は靴を置いたまま、横にある階段で上に上がってしまった。その瞬間、布のお面を付けた人と目が合ったような気がした。
えっ…何…?
そんなモノは刹那な時間だったけど。
「新しく山城国に来た審神者ね。」
男の声とも女の声とも分からない中性的な声で、話しかけられる。ぼーっとしていたから、返事が遅れた。
「はい。」
「来るのが遅かったんじゃないかしら?まあ、それは自由なのだからいいけど。」
今日までここに来なかった事を言われて、何も言えずにいた。
「岩動千隼さんね、宜しく。」