第6章 ”オカミさん”
「別にコイツを主だなんて思わなくても良いし、寧ろ、出て行きたくなったら出て行けば良いし。」
「おい!いや…まあ、本当に刀を扱う訳じゃないから、主って言うのは可笑しいとは思うけど、君に言われると本当にムカつく。」
どうする?ウチの代わりに加州が聞く。前田藤四郎は突然下を向いてしまう。何か変な事言ったのかな…?
「大丈夫かい?」
下から顔を覗き込む。でも、髪が邪魔で顔が良く見えない。どうしたものかと眉間に皺を寄せると、か細く、小さな声が聞こえた。
「良いんですか…?ご迷惑をおかけしますよ…。」
聞き取れた声は、若干涙声も混じっていた。ああ、泣いてるのかな?
「誰しも迷惑をかけるのはしょうがないよ、体を得たばっかだし。それよりも知り合った刀(こ)が折れました、なんて事になった方が嫌だな。それに、仲間が一振り(ひとり)増えるのは嬉しいし。」
ニッと笑顔を見せる。そうすれば、前田藤四郎の顔が上がる。彼の両目から涙が沢山の涙が零れていた。
勢いよく腕で涙を拭い、深呼吸をし、言葉を発した。
「”前田藤四郎”と申します。末永くお使いします。」
我が本丸に三振り目の刀が実装された。
★★★
それから数日が経った。怪我も一杯するわ、刀装が綺麗に無くなるわ、力の使い過ぎでフラフラになるわ、と色々あった分確かな成果は掴んではいる。
如何やら敵は時間を遡っている為か、函館から会津、宇都宮とこちらも遡っている。
「主君、戸締り全て終わりました。」
「ありがとさん!さあ、出かけようか。」
遡っていく毎に仲間も増えているし、鍛刀でも仲間を増やしてる。少ししか慣れてないけど。
「祭りに行くのか?」
「違う、買い出しだよ。食料が無くなってきたし、それにまだ万事屋さんの所に顔見せしてなかったし。」
祭りじゃねーのかよ…。あからさまに落ち込む赤い髪の少年、”愛染国俊”。新たに仲間になった刀の中の一振り。
そう、今日は買い出しに行く。本丸に居る人数が増えて、冷蔵庫にあった沢山の食料が底をつき始めていた。それに、こんのすけからいい加減に万事屋に顔見せして欲しいと、言われたので行く事にした。
お金は政府からたんまり貰っているから、そこはまだ心配はしていない。
「僕を連れて行くなんて、お金に困ったの?」
「いや、違うから。君を売るつもりはないから!」
