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審神者と刀剣と桜

第6章 ”オカミさん”


「アンタ、俺達が怖いと思ってる?」

 図星な事を言われて、自然と肩が揺れる。それを見逃さずに、さらに言葉が続く。

「分かりやす…。…まあ、インカムで話した時に声が震えてたし。そうなんじゃないかって思ってたよ。」

 確かにウチは人一倍、顔や態度で感情が出て来るから凄く分かりやすい。そんなの分かってる、分かってるけど…。無理なんだよ。

「そうだよ!怖いって思ったよ!!…昨日はそう感じる事は無かったけど刃向けて笑ってるし、加州達は怖いなんて思わないの?刀向けられてるのに…。それに…”ウチに刃を向けた”し…。それで怖いなんて思うななんて…無理だろ!!」

「何怒ってんの…。”向けた”ってアンタに直に刃を見せてないけど…。」

 加州の言葉に、ハッとした。そうじゃん、鞘に入った本体は見ていても、刃は間接的にしか見てない。
 じゃあ、何であんな自分が殺されるモノを見たんだろう。

「ごめん…。」
「はあ…一つ言っておく。」

 また溜息が吐かれる音がして、顔を加州に向ける。加州の赤い目が細められた。

★★★

「アンタが生きてる時代は戦とか無いんだろ。言っておくけど、俺は別に刃を向けられたからって”怖い”なんて思わないよ。って言うか、”怖い”なんて…。」

『ーー君!ねえ、何で…何で…俺を…。』

(捨てられる”怖さ”は知ってる。)

 そこで話すのを止めた加州の顔は、苦虫を噛み潰したようだった。
 急に話すのを止めた彼を不思議そうに心配そうに千隼は見ていた。

「加州…?」
「兎に角、”俺”はそうだから、今剣はどうだか知らないよ。…確かに俺が居た時代の人も、向けられるのを怖いって言う人はいた。だから、アンタがそう感じて、思うのは可笑しいとは思わないよ。」

 怠い、重いと感じる身体を動かして、加州は千隼の目の前まで行く。隣では前田藤四郎が支えれる様に待機していた。

「でもさ、アンタは何の為にここに居るの?政府から言われたから?ただの好奇心?それだけで”俺達”を使うのはアンタの自由だから何も言わないけど、何か理由があってここに居るのなら”怖い”って言って、めそめそ泣いてんな!」

 これでもかという程、彼女に対して叱咤した。昨日の怒りとは全くの別のモノがそこにあった。
 彼にとって、信念があるのに弱腰でいる。それがどうしても気に食わなかった。
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