第6章 ”オカミさん”
彼らの手入を終えた後、”前田藤四郎”と向き合った。
「手伝ってくれて、有難うございます。」
目の前の少年にお礼を言えば、その子は両手を前で振った。
「いえ、こちらこそがお礼を言う方です。」
「何で?」
「…加州さん達に助けてもらったんです。」
助けてもらった?どういう事?”前田藤四郎”の口から出て来た台詞に驚いた。
彼は話を続けた。
★★★
『あの…。』
空中に出来ていた扉の前に、加州と今剣はいた。これから千隼の所に戻ろうとしていた時だった。
彼らの前に一人の少年がいた。
茶髪の前下がりのおかっぱヘアーの男の子。そう、千隼を起こしに来た少年である。
⦅え…誰?⦆
子供は好きで、邪険になんて出来ないし、するつもりの無い加州でも反応が遅れる。
少年は眉を八の字に下げる。どうやら困っている様だった。
『どうしたんですか?あなたのなまえは?ぼくは今剣っていいます!』
加州が声をかける前に、今剣が声をかけていた。それも質問攻めで。相手は若干吃驚していた。
流石に可哀そうになり、今剣を止める。そうしながら、彼も質問をする。
『お前の名前は?』
『前田藤四郎…と申します。』
そう言うと一礼する。前田藤四郎の腰には短刀が差してあった。
⦅刀…。もしかしてコイツも…。⦆
一つの予想が加州の中で作られる。でなければ、小学生位の少年が戦場にいるはずがない。
尚且つ幕末に作られた洋服にしては、千隼が着ている洋服に近いモノがあった。
『なあ、一つ聞くけど、アンタもーー、』
聞こうとした瞬間だった。加州の横を何かが掠って行く。
間一髪で今剣と前田藤四郎を連れて、避ける事が出来たが、その際、腕に新しい傷が出来た。
『痛ってー。…さっき、今剣と一緒に倒した筈なのにさ…。どういう事なの…?』
宙に浮く蛇の様な骨格のモノ。それはつい先程まで目にして、相手にしていたそれそのものだった。
『話は後だな…。今剣動けるなら、刀構えろ!もう一度片づけるぞ!』
『はい!』
★★★
「ーー加州からウチの事を聞いて、呼びに来たと言う事?」
「『審神者でないと怪我は治らないから』と。」
幾ら呼んでも反応が無かったので、そう言って掌に爪が食い込む程、前田藤四郎は両手を強く握ってた。
ウチはただ見ていた。