第39章 錯綜と進む針と
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
rrrrr rrrrrrrrr……
「ん……」
右の耳元で、なにかがけたたましく鳴り響いている。
聞き慣れたそれに、アルフレッドはほとんど体にしみついた習性で手を伸ばした。
「……hello」
「あぁ! やっと出てくれましたか! ご自宅にもつながらないしもう人を向かわせようかと」
電話の相手は、上司の一人だった。
ゆっくりと体を起こして、自分が研究所の一室にある、執務室の机につっぷしていたことに気づく。
窓の外では鳥たちがさえずっていた。
太陽が新鮮な光を振りまき、朝であることをアルフレッドにこれでもかと見せつける。
あくびと、電話を持ってない方の手で伸びをしながら、自分がここで一夜を明かしたことを理解した。
「あー……ごめん、なんかそのまま寝ちゃったみたいだ」
「全く、お体に障りますよ!」
「ごめんごめん。それでどうかしたの?」
「はい、そちらにカークランド様がいらっしゃるようなのですが、お通ししてもよろしいですか?」
「アーサーが? いいけど」
承諾の返事のあと、通話がきれた。
ぼんやりと耳から電話を離し、受話器に戻す。
まだはっきりしない頭だが、夢の光景は明瞭に覚えていた。
夢であることが不思議なくらい、鮮明に記憶されていた。
あれは本当に――
「入るぞ!」