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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第39章 錯綜と進む針と


続く言葉が、ふつりと抜け落ちる。

一瞬頭が真っ白になった。

目の前の光景を、自分の予感を、“彼女が手にしているもの”を信じたくなくて、アルフレッドはかぶりを振る。

指先が急速に冷えていく。

握りしめた拳は、微かに震えていた。

足下の床がひび割れて、今にもがらがらと瓦解していくような不安が背筋を這う。

「どうして……」

喉が乾いて、捻りだした声はかすれていた。

頭の中がぐるぐると混乱している。

言いたい言葉と、言うべき言葉が殺到して、言葉に変換されないものが嗚咽となって溢れる。



「どうしてきみが、“それ”を持ってるんだい!?」



彼女の腕には、見慣れたシロクマが抱かれていた。

それは紛れもなく、マシューの“クマ二郎”だった。

彼女はアルフレッドの一喝にも答えない。

それどころか、まるで聞こえなかったかのように、唇をゆっくりと笑みの形に歪める。

月明かりを浴びて、彼女は悠然と微笑をたたえていた。

言いようのない不気味さを感じ、アルフレッドは思わずつばをのみこむ。

と、薄暗い闇のなかに、ぽうっと新たな光源がうまれた。

彼女の黒いワンピースの裾へ、赤い炎が蝶のように舞い降りていた。

ぱっと火が咲き、黒をゆるやかに緋色に染めだす。

それが合図かのように、彼女の足下、壁、天井につぎつぎに小さな火が灯りはじめる。

「え――」
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