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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第39章 錯綜と進む針と


気がつくと、アルフレッドの目の前に見慣れたテーブルがあった。

研究所内の小さなカフェテリアに、彼は立っていた。

照明もなく、深夜の暗闇に包まれたカフェテリアは、ひたすらに静けさを保っている。

ここは爆発を逃れたらしい。

マシューと利用していた記憶のままの風景を、アルフレッドに見せていた。

「……」

テーブルに手をつく。

冷たく硬い感触が、音もなく伝わってくる。

今朝もここで遅い朝食をマシューととったが、もうそれは遠い昔のように思えた。

と、視界の端でなにかが動く。

窓の方角だ。

少し離れた廊下で、ちょうど人影が角を曲がり、姿が見えなくなった。

その後ろ姿は、アルフレッドが見たことのある少女のものだった。

「っ!?」

瞬時に足が床を蹴って、勝手に駆けだす。

心臓の鼓動が跳ね上がっていた。

疲労と眠気が一気に吹っ飛ぶ。

はやる気持ちに足がもつれそうになるが、彼女が曲がった角を勢いよく曲がり、減速して歩みをとめた。

月明かりに淡く照らされた廊下を、ゆっくりと、彼女は歩いていた。

「公子!」

呼ばれた彼女の足が、静かにとまる。

勢いで名前を呼んだが、とっさに続く言葉が出なかった。



――なんだろう、この違和感は



脳髄のはしで、なにかが警鐘を鳴らしていた。



――そもそも俺はいつカフェテリアに来たっけ?



優雅ですらある所作で、彼女が振り返る。

薄い月明かりのもと彼女の髪が翻り、待ち焦がれていたはずの瞳が、アルフレッドに向けられた。

「よかった来てくれたん……――え?」

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