第3章 日常
「わぁ!?ちょ、ちょっと千佳…」
イスの上に膝をついた千佳が腕を伸ばして抱きしめてくる。
「会えない時間が愛を育てるとも言うし、私たちも大丈夫だよね?」
「まじないわー。千佳ちゃーん。それ俺への当てつけ?」
「あれ、陸くんじゃーん。いたの?」
「いた、いた!会話にも参加してた!ねっ、ちゃん」
私は慌てて顔をそらし、千佳のブレザーの袖をシッっとつかんだ。
「陸くん、これが答えよ」
千佳がアゴをしゃくり、高橋君が後ろをふりかえった。
私も怖いもの見たさで、ついつい窓側のグループへと視線を送ってしまう。
(…あれって、やっぱにらんでるよね…)
クラスでも一際目立つ彼女たちは、高橋陸のファンだ。
ファンクラブでは抜け駆け厳禁を掲げているらしく、私はたびたび「厳重注意」を受けるハメになっていた。
中には彼氏持ちの人もいたけど、追っかけは別腹なんだとか。