【進撃の巨人】Happy Birthday【生誕祭】
第1章 Happy Birthday Dear Levi
「だって、今日は12月25日でしょ」
「・・・ああ、それがどうした?」
「北の地方の習慣でね。厳しい冬でも葉を落とさない樅の木は、“永遠の命”の象徴とされているんだ」
“永遠の命”という言葉に反応するように、リヴァイの三白眼が初めて熱を帯びた。
「そして今日、この樅の木に花やガラス玉、キャンドルを飾るんだよ。そうすると、妖精が幸せを運んできてくれるという信仰があるんだって」
「・・・くだらねぇ。時間の無駄だ」
いくら永遠の命の象徴だからといって、こうして切ってしまってはいずれ枯れる。
妖精が幸せを運ぶだと?
こんなことで幸せになれるのなら、誰も苦労はしない。
わざわざ壁の外に行って、命を落とすこともないだろう。
険しい表情をしているリヴァイに、ハンジは優しい笑みを浮かべた。
「いいじゃない。私達はそうでなくたって、命を落としているんだから」
「・・・・・・・・・」
まるでリヴァイの心を読んだかのような言葉に、ハッとして顔を上げる。
「もしこれが命の象徴ならばさ・・・私達が死なせてしまった命も宿っているかもしれない」
昨日だけじゃなく、これまでの壁外調査で死んでいった兵士達。
一年に一度、思い出す機会があってもいいじゃないか。
モブリットが抱えていた箱から、透明のガラス玉を取り出す。
紐が取り付けられたそれを、深緑の針葉に引っ掛けた。
「それに、こうすることで誰かが幸せになるかもしれない。いや、幸せとまではいかなくても、笑顔になったり、心が休まったりするかもしれない」
誰が作ったのだろうか、赤色の服を着た人形も飾る。
キャンドルは清らかな白色だった。
「そう考えたらさ・・・馬鹿馬鹿しくても、私は意味があることだと思うんだ」
そして、リヴァイを振り返った。
「特にリヴァイ、貴方のためにもね」
「俺・・・?」
「そう。これは私とミケやモブリット・・・いや、調査兵団全員からのプレゼントだよ」