【進撃の巨人】Happy Birthday【生誕祭】
第1章 Happy Birthday Dear Levi
エルヴィンのそばにある暖炉の火が消えそうだ。
室温は、外気温とさほど変わらないだろう。
こんな寒さの中、団長は体を休めることもせずに死んだ者の家族へ手紙を書き続けている。
その表情は重く、つらそうだった。
二人の間で流れる沈黙。
外で、木の枝から雪が落ちる音がした。
「安心しろ・・・リヴァイ」
聡明で美しい青色をしたエルヴィンの瞳が揺れる。
「お前の大事な“命”の火が消えた時は、お前にこの仕事を譲ってやる」
「・・・あ?」
「とぼけるなよ。俺が知らないとでも思っているのか」
隠さずとも分かる。
人類最強と謳われる男の心の中には、一つの怖れがあるということを。
そして、その怖れが日増しに少しずつ大きくなっているということを。
「彼女の最期は、自分の手で始末をつけたいだろう」
「はっ・・・面白ぇ冗談だ」
「冗談になるのか? お前の彼女への気持ちはその程度だったのかな」
「・・・・・・・・・・・・」
含み笑いを見せるエルヴィンから目を逸らし、窓の向こうで朝焼けに染まっている雪に目を向ける。
リヴァイにとって、誰よりも重く、大切な命。
それを失う恐怖は、日増しに強くなっている。
冗談で済ませられるのなら、何を犠牲にしてもいい。
しかし、この世界には、何を犠牲にしても守れないものがある。
だから自分にできるのは、死を受容すること。
いつ訪れても良いよう、常に側にあるものと認識しておく。
それが、自分の死であっても、他人の死であっても、そして・・・
愛する者の死であっても。
「ああ・・・“その程度”かもしれねぇな」
彼女への想いの程度は、圧倒的な力を誇る兵士長にそう覚悟を決めさせるほどのものとなっていた。