【進撃の巨人】Happy Birthday【生誕祭】
第1章 Happy Birthday Dear Levi
まだ起床時間までには時間があるが、何となく寝付けずにベッドから出る。
そして、身支度を整えると廊下へ出た。
案の定、まだ兵舎は寝静まっているため、自分の足音以外は一切の音がしない。
そりゃそうだ。
調査兵団は昨日、壁外遠征から帰還したばかり。
兵士達は皆、疲れ切っているだろう。
ろくに睡眠も取らず、平気な顔で歩き回っていられるのは自分くらいのもの。
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、どうやら他にも寝ていない者がいるようだ。
数メートル先にあるドアから灯りが漏れている。
あれは、エルヴィンの執務室か。
「あの野郎・・・また寝てねぇのか」
溜息を一つ吐くと、調査兵団実行部隊トップである団長の部屋をノックもせずに開ける。
すると、ナイトガウンを羽織ったエルヴィンが、正面に置かれた机に座っていた。
「なんだ、リヴァイか。驚かすなよ」
小さなランプの灯りだけで書き物をしていたのだろうが、突然の来訪者に眉をひそめる。
「別段、驚いたようには見えなかったが」
「ノックぐらいしろ、取り込み中だ」
「なんだ、執務室に女でも連れ込んでるのか」
無礼極まりない態度でソファーにドカッと座った兵士長に、団長は肩をすくめながら苦笑いをする。
「リヴァイと違って、俺にはそんな暇などない」
「・・・・・・・・・・・・」
皮肉か、それともささやかな仕返しか。
意味深な物言いでリヴァイを牽制する。
しかし、エルヴィンとはそれなりの付き合いだ。
リヴァイもまた、軽くまばたきをする程度の反応しか見せない。
そして彼の注意は、今も動きを止めない団長の手元に向けられた。
「・・・死んだ奴の家族に書簡を書いてるのか」
昨日の遠征で、大勢が命を落とした。
死亡通知を書くのは、別にエルヴィンだけに課された仕事ではない。
それでも彼は誰にも譲ろうとしなかった。
「壁外調査から戻ったばかりだというのに徹夜か。仕事熱心もほどほどにしろ」
「なんだ、俺の心配をしてくれているのか」
「・・・お前がぶっ倒れて、その仕事が俺に回ってくるのが面倒なだけだ」
「・・・・・・・・・・・・」
初めてエルヴィンがペンを動かす手を止め、リヴァイに顔を向けた。