第11章 番外編・バレンタイン
ヴーッ ヴーッ
耳元で鈍いケータイ目覚ましの音が鳴る。時刻は六時。いつもの朝だ。
ベッドの上で大きく伸びてタッチパネル式のケータイを開くと、新着メールが来ていた。ので、片手櫛で髪をとかしながらもう片方の手でパスワード入力をし、受信メールボックスを見てみる。
「………は?」
無意識に声が出る。それもその筈、受信メールボックスには『黒尾鉄朗』という差出人のメールが五件も入っていたのだ。今日私の誕生日でもないのに…。本文を見てみると何と言うかどうでもいい内容だった。メール開封して、一応そのままにしておく。そして改めて日にちを確認する。
『2月14日』
やっぱり心当たりがない。
ベッドの上で過ごしてても時間の無駄なので
部活に行く準備に取り掛かった。
*
「……あっ、孤爪?」
後ろからもう聞きなれた同学年の男子の声が聞こえる。振り返ってみてみるとそこには国見が小走りでこちらに向かってきていた。
「あ………おはよ」
「うん、はよ。……つかなんかあった?」
挨拶を返した国見はジトッとした目でこちらを見つめて問いかけてくる。軽く首を傾げて答える。
「えっ、特に何も………あっ」
「ん?」
「あ、えっと、朝クロから連続でメール来てて………」
「あー、黒尾って人?音駒の主将」
「うん、そう………これ。」
そう答えて受信メールボックスだけを国見に見せる。すると国見は思わず、というように苦笑いして言う。
「あー……、あっ、今日バレンタインだからじゃない?」
「え……バレンタイン………あ、そっか」
「お前な…。」
国見が私のことを見てさらに呆れたような顔をする。
ケータイを閉じつつ答える。
「でもさ……、バレンタインって、セントバレンタインが拷問の末に撲殺された命日でしょ…?なんでこんなメール送る必要あるの……?」
「………お前さ、テレビとか朝つけてる?」
国見は呆れを通り越したのか、それとも通常の状態に戻ったのか無表情で問いかけてくる。
「まぁ…天気予報とかを見るためにはつけてる。……あ、」
「わかった?バレンタインっていうのは、…女子の方から異性の好きな人にチョコ渡すって言う行事みたいなもんだよ。」
確かに、今朝テレビは異様なくらいチョコについてやってたような気がする。