第3章 かうんと・わん
「行ってらっしゃい」
次々出掛けていく兄弟、そして両親を見送り出して始まった24日の朝。
バッチリ決まった服装で意気揚々と繰り出していった彼らに反して、未だ寝巻きにしてるジャージ姿のままで玄関に取り残された私はどっからどうみてもやる気なしのだらだらモードだった。
玄関のドアが最後の仕事と両親を吐き出しその姿を隠したのを見届けると、冷気刺す空間からさっさとおさらばだとばかりに退散して自室に戻った。無論、お見送り用作り笑顔は一瞬にして真顔である。
自室に戻ってまずは着替え。
いくらなんでも一日寝巻きは年頃の乙女としてまずかろう。
そうなけなしの女子力が訴えてきたので適当に引っ張り出した服を身につけ程々に身嗜みを整えておいた。
……まあ結局のところ着替えたところで何処かに出掛けるということもなかったのだけど。
日がな一日ただ意味もなくスマホをいじってみたり漫画を読んでみたりテレビを見ているうちに、天高くあった太陽はあっという間に傾いて行き、やがて沈んで辺りはとっぷりと暮れていた。
良い子はいいかげん帰らなきゃ親から雷が落ちてくるだろう時間になったけれど我が親兄弟は帰ってくる気配もない。
それもそのはず。
奴ら、今日は外泊の予定なのだ。全員だ。揃いも揃ってだ。
毎年泊まりがけで出掛ける両親はまだいいとして、せめて兄弟の誰か一人でもぼっちなうな私のために帰ってきてくれればいいのに。
そんな気を利かせてくれるリア充は我が家にはいないのである。
といっても本当にお泊まりを中断して私のために帰ってこられてもそれはそれで微妙な気持ちになるので別に帰ってこなくてもいいのだけど。むしろ帰ってくんな。
外泊リア充組はせいぜい目一杯エンジョイしてくるといい。
そんなわけで夕飯も一人で済ませて、入浴もして、後はもう寝るだけとなった。
就寝するにはいささか早い気もするけれど、どうせ起きていたところでやることは何もない。
ふかふかのベッドの中に潜り込んで瞼を落とせば、次第に思考も溶けてきた。
明日我慢して明後日になれば。
そしたら、音也に会える。
薄れ行く意識の中で、そうと思ったのを最後に私は深い眠りに落ちていった。