第2章 現実エスケープ
「私、煙草1本吸ってから戻る」
「じゃあ、俺先に戻ります」
私が煙草に火をつけると結城君は社内に戻っていく。
彼の背中を見送っていると、屋上のドアをあけたところで急にこっちを振り向いた。
「俺、特別背が高くないし、お金持ちでもないし、長男だし、頭良くないし、性格は、結構キツいって言われててタイプじゃないかもしれないけど。
アズサさんはめっちゃ俺のタイプですよ。今度から超優しくしますねー」
大きく手を振って屋上のドアを閉めた。
「ホント、馬鹿だな、結城君は」
今のは独り言じゃない。彼に投げ掛けた言葉だ。
絶対聞こえてないだろうけど。私は聞いて欲しくて、声に出した。
今日じゃなくても、いつか聞いてくれれば、それでいいと思いながら。