第2章 現実エスケープ
あーあ、どっかにいいひと落ちてないかなあ。
背が高くって、お金持ちで、出来れば長男以外で。
頭良くって、性格良くって、もちろん顔は良くって、私には超優しい人。
「そんなひと、何処にも落ちてないっすよ」
「は?」
ふと横を見ると、こっちを馬鹿にする目で見ている人間がひとり。
ベンチで寝転がる私を見下ろす様にして煙草を吸っていた。
社内禁煙を謳っている会社だが、屋上でこっそり煙草を吸う社員は少なくない。
私はそこでちょっとサボってやりましょうと、のんびりとひとり、日光浴を楽しんでいた。
太陽の眩しさが癖になる。
日焼けなんか気にしないで仰向けで日光浴。
「アズサさんはホント、サボり常習犯な上、独り言多いですね」
「人の独り言聞くなんて趣味悪いわね。サボってンのは結城くんも一緒でしょ」
結城くんは同期。同期のクセに敬語で話してくる不思議な子だ。
「結城くん、また面倒な仕事押し付けられて逃げてきたんでしょ」
彼は要領がいい。その分仕事も早く終えるし、量をこなせる。
でも、それを裏でセーブしないものだからどんどん仕事がまわってくる状態になっている。
あれ?これって要領悪いって言わない? まあ、どうでもいっか。
「まー、俺は出来る男ですからね」
自慢げな顔に殺意が沸く。どうせ私は出来ない女だ。
私は彼のためにベンチの上で伸ばしていた足を曲げると
小さく開いたスペースに彼が座る。
「私、仕事できないけど、優しいでしょ」
「俺を座らせてくれるのは優しいですけど
その体勢、スカートだったらパンツ見えてます」
「スカートじゃないからいいじゃない」
「ちょっと待って。いま、想像しますから」
目を細めてこちらを見てる。
そういうこと、平気でするから困る。想像してどうすんのよ。
まあ、こういう馬鹿なとこがあるからいいんだと思う。
結城君なら別に嫌じゃない。