第4章 景色
予想通り、あの店でごはんを食べた。
美味しかった。
やっぱり、あのメニューを取り合いした。
やっぱり、私に「いいよ、食えよ(苦笑)」って言ってくれた。
そして、私たちはタクシーで埠頭まで来た。
暗闇に浮かぶ星々と、対岸の灯りと。
頬に当たる、かなりの冷たさの風と。
いつかもあったな、こんなこと。
いっそ、全身の感覚が無くなっちゃえばいい、と思った。
このまま何にも感じなくなっちゃって。
2人して。
夜の闇に溶けちゃえばいい。
そう思って、夜の海を眺め続けた。
翔 「10年後ってさ、どーしてんだろーな。俺たち。」
翔の、低い声が耳をかすめた。
ひかり 「・・・・・え?」
翔 「10年後。すっげ未来のことような気がするけどさ。ひたすら前見て歩いてると、気付いたら1年経ってたりじゃん?結構あっという間だったりすんのかな(笑)」
翔が空を仰いだ。
暗い夜空に幾つかの星が見える。
あの星たちは、10年後にもあそこにいる。
その星を、翔と私は一緒には見ていない。
翔 「10年後・・・・・どうなってんだろーなぁ。」
10年後は。
ビックリするくらいの位置に立ってるんだよ、アナタタチ。
今の状態からじゃ想像つかないくらい、すごいことになってるんだよ。
ハワイでライブやったりしてるんだよ。
考えらんないでしょ?(苦笑)