第3章 過去
翔 「・・・・・・おまえ、どーしたの?」
急に立ち止まった翔にぶつかりそうになった。
ひかり 「・・・・・・・え?」
どーしたのって言われても・・・・・・
答えようがないのよ、こっちも!
翔 「何か変なんだけど(苦笑)」
ひかり 「・・・・・・・何が?」
翔 「珍しく、すげー真剣な顔して考え込んでるし。」
ひかり 「何それ。まるで私がいつもは考えてないみたいな(ムカ)」
翔 「そーは言ってないけどさ(笑) 何、何かあった?」
ひかり 「え・・・・・いや、その・・・・・」
視界にクリスマスを宣伝するポスターが入った。
ひかり 「クリスマスプレゼント、どーしようかなって考えてて!」
どう?!
上手く誤魔化せた?!!
翔 「クリスマスって・・・・・気が早ぇだろ、おまえ!」
笑いながら、また歩き出す。
この道は、きっとあの店に行くんだな。
2人でたまに行ってた店。
ほどよく人目につかずにごはんを食べられる、あの店。
付き合ってた頃の、その店にいる自分たちを思い出す。
そんなにしょっちゅう二人でごはん食べられるワケはなく。
ほんと、たま~に行くだけだったけど。
翔の好きな魚介の料理が美味しかったなぁ。
私も好きだったから、いっつも最後取り合いになって。
でも、最終的には私にくれるんだよね。いつも。
一気に、記憶の映像が脳内に映し出され始めた。
大学で出逢った頃。
ゼミで侃々諤々やり合ったディベート。
みんなで行ったスキー。
しょっちゅうやってた飲み会。
初めて2人っきりで出かけたドライブ。
初めて重なった手から伝わった想い。
初めてキスした後の照れた顔。
初めて腕の中で抱かれた夜を灯す明かり。
何度も確認した鼓動。体温。呼吸。声。
それら全て手放した、あの夜の空気。