第1章 交差点
翔 「青になったぞ。」
頭上から声が降ってきた。
(へ???)
反射的に横を向くと、有り得ない顔があった。
(へっ?!!!!!)
ポカンとしてる私の頭を軽くはたいて、
翔 「ボーっとしてんなよ(笑) 渡るぞ?」
スタスタと歩き出す後姿は、記憶のままで。
大股に歩く歩幅も、記憶のままで。
ポケットに手を突っ込んで猫背な背中すらも、記憶のままで。
それが有り得ないことを重々分かってるから、私はポカンとしたまま突っ立ってた。
横断歩道を半分ほど行ったところで、彼が振り返って。
ちょっと眉をしかめて、顎をクイッとした。
何シテンノ?!信号変ワルゾ。早ク来イッテ。
そう言ってるのが分かった。
いや、声は出してないけど。
私の右足が一歩前に出る。
続いて左足も歩み出す。
パタパタと追いかける自分の姿を、何故だか空の上から自分が眺めてる気分になった。
私、いつもこうやって、翔の後ろ追いかけてたな。って。