第1章 交差点
会社帰り、何となくクリスマス仕様になってきた街の中をスタスタと歩く。
急いでるわけじゃない。
誰かと待ち合わせしてるわけでもない。
金曜日の夜、フワフワと浮き足立ってる街並みが何か腹立つのだ。
だから、サッサと通り過ぎてやる。
大きな交差点で立ち止まる。
信号待ちで止まった横のビルの、大きなショーウィンドゥに自分の姿を見た。
(・・・・・・機嫌悪そうな顔してるわ (苦笑))
不機嫌な私の顔は、かなりブサイクに思えた。
車道の信号を見る。
右折専用の信号が灯り、車がドンドン右へ右へと流れていく。
(もう信号変わるな。)
ふと空を仰ぐと、幾つか星が見えた。
この空気の冷たさ。
この夜の気配。
この星を眺めてる感覚。
頭の、体の、心の奥深くにしまわれていた記憶の感触が、既視感のようにふいに飛び出してきた。
(何か・・・・・前にもこういうのあったような・・・・・)
一陣の北風が吹いた。
風に煽られて、視線を交差点に戻す。