第1章 キャラメル・ソング
新幹線に乗ればたいした距離でもないから、会いにくればいい。
そう言ってもよかったけど、言わなかった。
の居るところはココで、オレはあっち。
単純で、それでいてどうしようもない現実。
二人で居る時間がどんどん過ぎていく。
砂時計の砂がサラサラと落ちていくみたいに。
何かを伝えたいのに、言葉にならないもどかしさ。
好きだと思う気持ちも、言わなきゃいけない「サヨナラ。」も、繋いだ手から伝わるように、もう一度ギュッとその手を握りしめる。
夕闇が辺りを完全に覆い、すっかり暮れた空に一番星が瞬く。
その空を、鴨川の緩やかな流れを、冷たい空気を、横で手を繋ぐを、記憶に焼き付ける。
あの窓からの景色と同じように、ふとした時に鮮やかに思い出せるように。