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キャラメル・ソング

第1章 キャラメル・ソング


南西向きのベランダから見える景色。


春の終わり頃から見てきたその景色はどこにでもある街並みで、ここからぼんやりといつも眺めてた。

夏に向かってどんどん緑の葉っぱが増殖していって、真夏にはいつもいつもうるさく鳴いてた蝉の声。
夏の夕方、二人でアイスを食べながら扇風機の風に吹かれてた感触。

気付いたら、夏がいつの間にか終わってて、窓から入る風が少しずつ冷たくなっていって。
街並みのそのずっと先に見える山に、夕陽が落ちていくのを見ていたり。



その景色を見るのも、今日で終わりかぁ。


一つ一つ家に明かりが灯り始める。
さっき出来た飛行機雲が刷毛で掃かれたように流れていく。




 「はい!出来た!」


鏡を渡される。

美容師をしてるが、今日突然「髪切ってあげるわ。」と言い出した。
舞台も終わったし、まぁそれもいいかなと。


 「男前になったやん(笑)」


顔や服に付いた髪を払いながら笑う。


智 「サンキュ。」

 「どういたしまして。お餞別やから。」


後片付けしながら、さりげなく言われた。

お餞別。
そうか。もう本当に離れるんだ。


 「ごはん、どうする?」

智 「外に食いに行こう。」

 「そぉ?どこがええのん?」

智 「あそこのお好み焼き。」

 「好きやねぇ、あのお好み(笑) 京都の最後の晩餐がお好みって(笑)」




本当はの作ってくれるカレーを食べたかったんだけど、部屋で二人で食べたらが泣いてしまうような気がした。









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