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言われてみれば、単純で。

第8章 別稿 私の気持ちは、難解で。


あの日から丹羽イツキ。私は彼を丹羽先輩と呼んでいるので次からはそう言いましょう。
丹羽先輩は所構わず私に話し掛けて来るようになりました。

私は小さな生き物がとても好きなのです。
いつものように小さな川の水底に魚が群を成して泳ぐ様を見下ろしていました。
中学校のすぐ近くにあるその橋は使う生徒が少ないので私の中では穴場でした。
静かにそれを見ていると後ろから聞き慣れてしまった声がしました。
少し高めのその声の持ち主は勿論丹羽先輩です。

「キョーちゃん、なにしてるの?」
丹羽先輩は鞄を持っていなかったので学校から私を見かけて態々此処まで来たようでした。

「魚見ています。この時期はとても綺麗に見えますから」
「いるの?」

丹羽先輩はいつも短い言葉をどんどんと私に投げ掛けます。
それに付いて行けず、私と丹羽先輩の間には沈黙が流れる事がしばしば有りますがそれは余り気にしていないようでした。

「あっちとか、あとは、その辺に...」
「ふーん。で、あとは、何が居るの?」

丹羽先輩は私が話し終える前に返事をするのです。
私は其処には亀や蟹も居てザリガニだと色が目立つので比較的見つけやすい事を伝えました。

そうするとそれが楽しいのか訊ねられました。
私から言うのであれば、楽しいと思わない方がどうかしているのです。
この小さな世界の中を上から覗き込むのはとても興味深い事。

丹羽先輩は色々と訊ねてくる割には何故か余り興味がないようでした。

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