第6章 言われてみれば、単純で。
ただ、何故あんなことになったのか、そしてこの1ヶ月間はなんだったのか其れだけが頭の中を堂々巡りしていた。
「丹羽先輩、やっぱりおかしいですよ。いつもと様子が違います」
「 そりゃあ、そうだよ 」
俺は自分で思ったより大きな声を出していたようだった。
キョーちゃんはぽかんとしてた。
連絡するなと言われて1ヶ月間放置された。
それなのにそれを無かったかのようにされれば誰だってそうなる。
俺の声が厨房にも届いたのだろうか。
店主が心配そうにこちらを覗いていた。
俺はなんでもないと、伝えるように首を傾げて笑う。
彼は少し不安げな顔をしてまた奥に帰っていった。
「キョーちゃんはどう思ってるか分かんないけどさ。
俺だって、色々思うとこはあるんだからね」
「そうですか」
彼女は今日此処で会ってから初めての煙草を咥えた。
いつもの、俺とおそろいのジッポでそれに火をつける。
息の音が聞こえるほど深く吸い込んでいた。
彼女が大きく、ゆっくりと息を吐くと紫煙が天井へ舞い上がった。
ふわふわ揺れて、広がって、消えていく。
俺はただそれを見ていた。
視界の端でキョーちゃんが自分の指先を見つめていた。
少し曲がった指先。
店内にかかる音楽と、厨房から聞こえる内容までは聞き取れない店員と店主の雑談。
それだけしか、聞こえない。
随分と長く感じた。
彼女が煙草を1本吸う間、俺達は一言も言葉を交わすことなく、ただただ、お互いを見ない振りを続けていた。