第5章 この崩壊は、突然で。
「好きって、一体何なんでしょうか?」
「は?」
「丹羽先輩はどう思いますか?」
どう思うって。
素直に答えるならば、俺も分かってない。
そんなこと、言うはずもなく質問を質問で返す。
「キョーちゃんはどう思うの?」
「私は分からないです」
キョーちゃんはグラスに並々とに入ったワインを一気に飲み干した。
「私は悪いのでしょうか?」
俺が冗談で言った言葉を気にしてる様子。
そんな気にする事ではないと思っていたけれど、どうやら彼女の中では大きい言葉になってしまったようだった。
「悪くないよ、悪くない」
「だってさっき丹羽先輩が」
彼女の瞳がやけに光ってると思ったら一筋の涙が頬を伝った。
なんだよ。何が起きたんだ。
俺はソファに座ったまま咥え煙草で彼女を抱き締めていた。
彼女の手から煙草を取り上げて灰皿に押し付けたあと自分のものも同じようにした。
キョーちゃんはおとなしく俺の胸の中にいて、背中を撫でてやる。
彼女の腕が俺の背中にしがみついてる。
訳が分からないけどどうにかしたいのと何が彼女をこんな風にさせたのか知りたいのと様々な思考が頭を巡り巡る。
それなのに背中を撫でて「大丈夫」としか言えない俺が此処にいる。
何が大丈夫なんだろう。
俺がいるから大丈夫。
そんな安易な言葉で彼女を癒せるはずがない。
ただ、彼女の指が俺の背中にしがみ付いて離さないのをそのまま受け入れて、俺も抱きしめ返すしか出来なかった。