第3章 俺と君は、曖昧で。01
本を広げてそこに視線を落とすキョーちゃん。
俺は痛みが響く頭に手をおいて彼女に話しかける。
「キョーちゃん。眠くないの?」
「別に眠くないですよ 。この本読みたいですし」
「あっそう」
「丹羽先輩はソファで寝ちゃいそうですね」
「うん。寝る、だろうね」
「いつも思うんですけどスーツシワになりません?」
「なるけどクリーニングだせばいいよ」
「そうですか」
「キョーちゃん。大胆だよね。脱げって言うなら脱ぐけど?」
「そういうことじゃないです」
「だって帰りたくないもん」
「なんですかそれ」
今はいつもより一人で居たくない気分。
まあ、そういう気分。多分。
不意にキョーちゃんに触りたくなった。
彼女の髪に手を触れた。
ワックスか何かでセットされた髪をめちゃくちゃにした。
そんなつまらない悪戯。
「キョーちゃんの髪はガサガサだね」
「それはセットして固めてるからです」
「ふーん」
「ちょっと引っ張らないで下さいよ」
「うん」
今日のキョーちゃんは余りきつく言わない。
言われたままにじっとしていた。珍しいね。
たまたまなのか、俺がそうさせたのか。
後者なら嬉しいんだけどその辺りは彼女しか知らない。
「眠たいなら寝てください」
「キョーちゃんと寝たい」
「はいはい。ここに居てあげますから」
それは俺が意図する意味ではないのだけれど。
そう言っておきながら俺も俺でそんな気分ではない。
ただ嫌な事を言ってやろうと思っただけ。
それに乗っかってこないのでなかった事にしておいた。