第3章 俺と君は、曖昧で。01
「キョーちゃん家のキッチンに立ってみたいだけ」
「何でですか?」
「何となく」
うん。なんとなく。
彼女の縮図の中に、彼女だけの空間に俺は入り込みたかった。
部屋に遊びに来てるけど、ここよりももっと、キョーちゃんに近づきたい。
そんなことをなんとなく、とだけ表現した。
「じゃあ先輩。カレーは作れます?」
「多分」
「じゃあ私は今日からカレーが好きです」
「了解です。来週楽しみにしてて」
「今日じゃないんですか?」
「雨降りのなか買い物いきたくないし」
「夜中前には止むみたいですし晩ごはん食べてきますか?」
「うん。ピザ頼む」
「何か作ろうと思ったんですけど」
「ピザがいい」
「じゃあ、そうしますか」
この日はいつもより少しだけ長い時間彼女と過ごせた。
キョーちゃんの言った通り、日にちが変わる少し前に雨は止んだ。
濡れたアスファルトをいつか見た彼女のスキップに習ってすこし不器用に飛んでみようとしたが出来なかった。
あのリズムはそれはそれで難しいみたいだった。