第1章 おれのきもちはフクザツで。
「このボタン、小テストの時の
ゴミ箱って言ったことの仕返しですか?」
「まあ、そうだと思うんだったらそれでいいよ」
「私はゴミ箱じゃないですけどね」
「キョーちゃんでしょ」
「その通りです。丹羽先輩、呼ばれてますよ」
友人達がこちらを見て俺を呼んでいる。
もう少し話したかったけど、多分キョーちゃんもキョーちゃんで忙しそうだったので
俺達はここでさよならした。
「あ、うん。キョーちゃん、じゃあね」
「はい。丹羽先輩、卒業おめでとう御座いました。勉強頑張ってくださいね」
「キョーちゃん、ホントそればっかな」
「まあ、それ以外に先輩に言えることないですから」
「そっか。じゃあ俺頑張るわ」
友人達は俺のボタンがない制服を指差して笑った。
無理強いして渡してたのも見てたらしく、どうせ捨てられるとも言われた。
捨てられてもいいと思って渡したんだ。
ただ、俺が彼女にボタンを渡した、という行為をしてみたかっただけなのだから。
キョーちゃん、ありがとう。
君のお陰で、結構楽しく過ごせたよ。
もう会えないかもしれない、と言われてもわかんないけど、
俺とキョーちゃんが一緒に過ごしたときに着ていた制服のボタン。
それがキョーちゃんの物になったとき、俺は少しだけ彼女と何かを共有できた気がした。
ずっと彼女の近くに自分の分身がいればいいと思った。